老猫の介護|家の中で先に変える場所と毎日の世話

低いクリーム色のベッドでくつろぐグレーと白の猫。老猫の介護に向けた家の中の見直しと毎日の世話を案内するアイキャッチ。

猫が年を取り、好きな場所に上がらなくなったり、トイレ以外で排せつしたりするようになると、介護を何から始めるかを考えることになります。

始めるのは、寝床・トイレ・食事と水・移動のうち、猫が今困っている場所の見直しからです。

あわせて、気になる変化は早めに動物病院に伝えます。毎日の手入れは飼い主が手伝い、家で行うケアの分担は獣医師と決めます。介護を始める時期も、年齢だけでなく猫の変化を見て考えます。

本記事は医学的助言ではありません。獣医師団体や大学などの情報をもとに、獣医師ではない飼い主がまとめています。診断や治療の判断はかかりつけの獣医師に相談してください。

目次

介護が必要になってきたサインと先に動物病院へ相談したい変化

年を取ること自体は病気ではありませんが、行動や体の変化は老化と決めつけず、遅れずに獣医師に相談します。

活動量が減る、眠る時間が増える、体重が増減する、好きな場所に行きにくくなるといった変化にも、病気や歯の問題の可能性があります。

猫は病気を隠すのが上手で、重い病気でもかなり進むまでサインを見せないことがあります。

猫を含む多くのペットは人より早く年を取り、年老いると目が見えにくくなる、耳が聞こえにくくなる、走り回らなくなるといった変化が出ることがあります。こうした変化に家で気づいたら、年齢だけで判断せず相談の目安を確かめてください。

相談の目安家で気づく変化
家の中を変える前に動物病院に相談・元気がない
・食欲がない
・体重が減る
・水を飲む量が増える
・尿の様子が変わる
・食べたり飲み込んだりしにくい
・下痢
・嘔吐
遅れずに獣医師に相談・活動量が減る
・眠る時間が増える
・お気に入りの休み場所を避けて隠れる
・呼んでも来ない
・よく鳴く
・トイレ以外で排せつする
・睡眠や食事のパターンが変わる
・1日以上1か所に隠れて出てこない
・休みなく鳴く

どちらも獣医師に相談したい変化です。表の上の段に当てはまるときは、家の中を整えるより先に動物病院に相談してください。病気による変化かどうかは、獣医師の診察で確かめます。

猫の変化から先に見直す場所を決める

寝床・トイレ・食事と水・移動のうち、猫が困っている場所から家の中を見直します。高齢の猫は関節炎などで、食べ物・水・トイレに届きにくくなる場合があります。

筋肉量が落ちた高齢の猫には、快適で暖かい休む場所が役立ちます。食事と水の置き場所やトイレを増やして、移動する距離を短くすることも有益とされています。

見直す場所と、動物病院に相談する条件は次のとおりです。

猫の変化と見直す場所動物病院に相談する条件
寝床に上がりにくい(寝床)寝床に上がる動きが変わったら相談。横になる時間が長い場合は床ずれも相談
トイレに行きにくい・トイレ以外で排せつ(トイレ)使い方が変わったら相談
食べにくそう・食べる量が変わった(食器と水の置き場所)食べる量が変わった・飲み込みにくそうなら相談
段差や高い場所への移動が減った(段差と高い場所)ジャンプや登る動作が変わったら相談

寝床に入りにくくなったときに確認すること

寝床に入りにくくなった猫には、踏み台やスロープを足して上がりやすくします。寝床は、すきま風の入らない暖かい場所に置きます。

ただし、熱くなりすぎないようにしてください。素早く動けない猫は、熱すぎるとやけどをするおそれがあります。

室温の考え方や、暖房器具を使うときの注意は、猫の寒さ対策|寒がるサイン・室温の考え方・暖房器具の注意にまとめています。

寝床で長い時間同じ姿勢のまま横になっている猫は、床ずれについてかかりつけの動物病院に相談してください。床ずれは、体の同じ場所に長時間圧力がかかってできる傷です。

麻痺した動物や動けない動物に多いとされています。

かかとなどにできる床ずれの受診の目安と、寝床・姿勢の見直し方は、猫のかかとの床ずれ|受診の目安と寝床・姿勢の見直しで解説しています。

トイレに行きにくくなったときの見直しと相談

トイレに行きにくそうなときは、縁の低いトイレを猫がふだん過ごす場所の近くに置きます。あわせて、トイレの使い方の変化を動物病院に相談します。

関節炎などの痛みで縁をまたぐのがつらいと、トイレ以外で排せつすることがあります。家が2階建て以上なら、それぞれの階にトイレを置く工夫もあります。

トイレ以外で排せつするようになっても、猫を叱らないでください。猫は悪意でしているのではなく、叱られても理由を理解できないとされています。

トイレ以外での排せつの原因には、病気による場合と、病気によらない行動の問題として起きている場合があります。どちらなのかは家では判断しにくいため、トイレの使い方が変わったときは、原因を動物病院で調べてもらいます。

トイレの使い方の変化は、尿路の病気や便秘のほか、筋肉や骨の衰え、痛みの始まりでも起こり得ます。

食べにくさに気づいたときの食事と水の確認

食べる量の変化や、食べたり飲み込んだりしにくそうな様子に気づいたときは、器や置き場所を変える前に動物病院に相談します。

健康な高齢の猫でも、食べたがらない原因は、嗅覚の低下より歯の不快感である可能性が高いとされています。さまざまな病気も食欲が落ちる原因になります。

高齢の猫は腎臓の働きが落ちやすいため、清潔な水にすぐ届くことが特に大切です。

食器は複数の場所に置き、階段を上らずに済むようにします。缶詰とドライフードを混ぜる方法もありますが、食事の内容やカロリーを変えるかどうかは、かかりつけの獣医師と決めてください。

高齢の猫がフードを食べないときの受診の目安と、食べてもらう工夫は、高齢猫がフードを食べない|受診の目安と食べてもらう工夫で解説しています。

移動しにくくなった場所を確認する

移動しにくくなった場所は、ジャンプや登る動作の変化から見つけます。関節の病気や筋力の低下は、まずこうした動作の変化として現れることがあります。

「カウンターに乗らなくなった」「窓辺の席を好まなくなった」といった様子が手がかりになります。

跳び乗れなくなった窓辺やソファには、踏み台やスロープ、ペット用の階段を置き、床には滑りにくい敷物を置きます。視力が落ちた猫には夜の明かりが役立ち、目が見えない猫の場合は家具やトイレの配置を変えないようにします。

動きの変化に気づいたときは、足場を足すのとあわせて動物病院に相談してください。

高齢の猫の体の手入れで確認したいこと

高齢の猫は、毛づくろいが下手になり、毛玉・皮膚のにおい・炎症が出ることがあります。爪が伸びすぎて、厚くもろくなることもあります。毛や皮膚・爪・歯の状態は、飼い主が確かめて手入れを手伝います。

  • やさしいブラッシングとコーミング(くしで毛をとかすこと)
  • 週1回の爪の確認
  • 必要なときの爪切り
  • ペット用の歯みがき剤を使った歯の手入れ
  • 毛づくろいの変化の見守り

ブラッシングやコーミングは抜け毛を取り、飲み込んで毛玉になるのを防ぐとされています。爪は、高齢の猫が爪とぎを使う回数が減るために確認が要ります。歯の病気は高齢の猫に多く、ほかの健康問題にもつながり得ます。歯みがきは、歯の健康を保つ手入れとして勧められています。

急に毛づくろいをしなくなったときは、健康問題のサインの可能性があるため、動物病院に相談してください。

動物病院に伝える変化と在宅ケアの決め方

動物病院には、元気・食欲・体重・トイレ・排尿・食べ方・治らない傷などの変化のうち、当てはまるものを伝えます。家で行うケアは、獣医師と分担を決めてから始めます。

受診の間隔は、高齢の猫なら6か月ごとを目安に、かかりつけの動物病院と決めてください。米国動物病院協会(AAHA)と米国猫獣医師会(AAFP)の指針では、すべての猫に少なくとも年1回の健診が勧められています。そのうえでシニアの猫は、少なくとも6か月ごとの診察がよいとされています。

米国コーネル大学 猫の健康センターの資料でも、高齢の猫には6か月ごとの健診が望ましいと説明されています。健康な高齢の猫でも、少なくとも年1回は血液・便・尿の検査を提案される場合があります。

これらは米国の指針や資料にもとづく目安のため、日本の動物病院で同じ間隔になるとは限りません。

家で行うケアの分担を考えるときは、犬と猫の終末期(命の終わりが近づいた時期)のケアについての米国の指針が参考になります。指針では、次の点が挙げられています。

  • 病院と家でのケアの分担
  • 家でのケアのやり方を獣医師が実際に教えること
  • 飼い主の意欲と慣れ具合を確かめること

どれも家でのケアの進め方に関わる点なので、いま飼っている猫が終末期かどうかにかかわらず参考になります。ただし、日本の動物病院で同じように進めるとは限りません。

家で行うケアだけでなく、治療の方針も、かかりつけの動物病院とよく相談して決めてください。治療の考え方は多様になっています。命を延ばすための治療のほか、苦痛を和らげて生活の質(毎日を心地よく過ごせること)を高める終末期の医療もあります。

命の終わりが近づいたときに獣医師と話し合うことと、最期の過ごし方は、猫の最期の看取り方|獣医師と話し合うことと最期の過ごし方で解説しています。

飼い主の負担を減らす工夫

介護は飼い主の負担が大きいため、抱え込まず、限界を感じる前にかかりつけの動物病院やペットシッターなどに相談してください。

食事や排せつが自力でできない、歩けない、寝たきりになるといった状態は、介護が必要になる例とされています。短期入院・往診(獣医師が家に来て診察すること)・訪問看護などのペットケアサービスが受けられる場合もあります。

こうしたサービスを使えるかどうかも、動物病院に相談するときにあわせて聞いてみてください。サービスの有無や利用の条件は、地域や事業者ごとに違います。

よくある質問

猫は何歳から高齢期と考えればよいですか

米国動物病院協会と米国猫獣医師会の区分では、10歳を超える猫がシニアとされますが、これは目安です。区分は子猫(1歳未満)、若い成猫(1〜6歳)、成熟した成猫(7〜10歳)、シニアの4つで、年齢を問わない終末期を5つ目に置いています。シニアに当たる年齢でも状態がよい猫は、獣医師の判断で成熟した成猫として扱う場合があります。

多くの猫で7〜10歳に加齢に伴う体の変化が現れ始め、12歳までにほとんどの猫が経験するとされています。世話や相談を始める時期は、年齢より体と行動の変化を見て決めます。

老猫の介護では、何を用意すればよいですか

用意するのは決まった一式ではなく、猫が困っている場面ごとの工夫です。たとえば、縁の低いトイレ、踏み台やスロープ、複数の場所に置く食器と水、すきま風の入らない暖かい寝床があります。

猫がトイレに入りにくければ縁の低いトイレ、好きな場所に上がれなければ踏み台やスロープを、今の様子に合わせて選びます。

寝たきりになった猫は、まず何を動物病院に相談しますか

まず、かかりつけの動物病院に、姿勢・排せつ・食事と水について今の様子を伝えて相談します。体の向きを変える必要があるか、寝床をどう整えるかも、猫の状態に合わせて獣医師に確認してください。家で行う介助は、獣医師から実際に教わってから行います。

動物病院で動けない重症の動物を看護するときは、排せつの汚れをすぐ掃除し、皮膚を定期的に点検して清潔にするとされています。これは病院での看護の説明なので、家で体をどう清潔に保ち、皮膚をどう点検するかは、かかりつけの獣医師に実際に教わってください。

夜鳴きや歩き回る様子が変わったら、どう相談しますか

家で原因を決めつけず、行動の変化に気づいたら動物病院に相談します。夜に目が覚めて鳴くことは、飼い主のよくある悩みです。原因には、聴力や視力の低下、認知機能不全(年齢とともに脳の働きが落ち、人の認知症に似た様子が出る状態)、痛み、ほかの病気などがあり得ます。

認知機能不全では、今いる場所が分からなくなったような様子が見られることがあります。家から離れて見知らぬ場所を歩き回ることや、夜中に多い理由の分からない大きな鳴き声が出ることもあります。似た行動はほかの病気でも起こります。認知機能不全はほかの原因を除いて判断されることがあり、病歴や身体検査、血液や尿の検査などが必要とされています。

日中に世話ができないときは、何を決めておきますか

まず、食事や排せつの介助など、留守の間に猫に必要な世話をかかりつけの動物病院に相談します。そのうえで、猫を家の外に預けるか、自宅で誰かに世話を頼むかを決めます。米国コーネル大学 猫の健康センターの説明では、高齢の猫は環境の変化に適応しにくいため、家の外に預ける場合は慣れた毛布やおもちゃを持たせるとよいとされています。自宅で知人やペットシッターなどに世話を頼む方法もあり、どちらにするかは猫に必要な世話に合わせて決めてください。

まとめ:老猫の介護を始めるときに確認する順番

老猫の介護では、猫の状態に合わせて動物病院に相談しながら、家の中の見直しと毎日の手入れを進めます。

まとめ
  • 先に動物病院へ相談したい変化が出ていないかを確かめる
  • 寝床・トイレ・食事と水・移動のうち、猫が困っている場面から見直す場所を決める
  • ブラッシング・爪・歯の手入れで、飼い主が手伝うことを決める
  • 伝える変化をまとめ、家で行うケアをかかりつけの動物病院と決める
  • 世話を抱え込まず、限界の前に動物病院などに相談する

年齢だけで介護を始める時期を決めず、受診の間隔も猫の健康状態に合わせてかかりつけの動物病院と相談してください。

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この記事を書いた人

保護して迎えた猫のこてつ1匹と暮らす飼い主です。実体験と公開資料を調べた内容を分けて書いています。獣医師ではなく、動物の医療・栄養に関する資格はありません。

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