高齢猫がフードを食べない|受診の目安と食べてもらう工夫

明るい室内で食器のそばに座る灰白の猫。老猫がご飯を食べないときの受診の目安と家庭での確認事項を紹介するアイキャッチ。

年を重ねた猫が、いつものフードを残すようになった。病気なのか、年齢による変化なのか。フードを替えてよいのかも、迷うところです。

何日まで様子を見てよいかは、一律には決められません。まず確かめたいのは、一般社団法人日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)が「こんな時はすぐ病院に」として挙げる条件に当たるかどうかです。当たれば、動物病院に連絡してください。

当たらない場合も、年のせいと決めつけずに食べ方の変化を獣医師に相談したうえで、フードと与え方を一つずつ見直します。

療法食(病気や体の状態に合わせて、獣医師の指導のもとで与えるフード)の指示や持病がある猫は、フードや与え方を変える前にかかりつけの獣医師に相談してください。

本記事は医学的助言ではありません。獣医師団体や大学などの情報をもとに、獣医師ではない飼い主がまとめています。診断や治療の判断はかかりつけの獣医師に相談してください。

目次

どのくらい様子を見てよいかまず受診の目安を確かめる

目安になるのは、ほかの症状があるかと、食べていない時間の組み合わせです。日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)が示す、すぐ病院に行く条件は次のとおりです。

すぐ病院に行く条件この状態が続いた時間
病気の症状と食欲不振が続いてみられた24時間
他の症状はないが、全く食べない、または全く水を飲まない36時間
他の症状はないが食欲が落ちて、改善しない72時間

表の時間は「この時間が過ぎたらすぐ病院へ」という区切りで、相談を始めるまで待つ時間ではありません。全く食べないと気づいたときや、食べる量が減って気になるときは、表の時間を待たずに動物病院に相談してください。

1行目の「病気の症状」は、食べないことのほかにみられる症状のことです。24時間待つのは救急の症状を除いた場合ですが、どの様子が救急に当たるかは、この目安には挙げられていません。

食べないことに加えていつもと違う様子があって迷うときは、家で見分けようとせず、表の時間を待たずに動物病院に連絡してください。

食べないうえに吐く・下痢をしているときは、次のどれか一つでも当てはまれば、表の時間を待たずに獣医師に相談してください。

  • 何回も吐く、または何回も下痢をする
  • 元気と食欲がない
  • 吐くことと下痢が両方ある
  • 吐いたものや便に血が多く混じる

このうち、吐いたものに多くの血が混じるときや、元気と食欲がなくぐったりして吐くときは、すぐ受診してください。下痢で便に多量の血が混じる、ひどい脱水がある、中毒の可能性があるときも、すぐ動物病院に連絡したほうがよいとされています。

動物病院へ連絡するときは、いつから食べないか、食べた量、水を飲んでいるか、嘔吐や下痢の有無を伝えてください。少しでも異変を感じたら早めに獣医師に診てもらうよう案内されています。

高齢に限らず、猫が急に食べなくなったときに確かめることは、猫の食欲不振が急に起きたら|受診の目安と家で確かめることにまとめています。

高齢の猫が食べないときに確かめたい原因

食欲がないときは、正常な行動としての食欲不振(こわさや環境の変化などで食べなくなること)、食事そのものの問題、病気の三つを、この順に考えます。

高齢の猫では、この三つを順に考えるのと並行して、年齢とともに起こりやすい変化も確かめます。嗅覚の低下が食事への関心に一部関わる場合がありますが、歯の不快感のほうが食べない原因になりやすく、さまざまな病気も原因になります。

考えられる原因具体的な内容家で確かめること
正常な行動としての食欲不振こわい、落ち着かない、興奮している。引っ越しや旅行食べなくなる前の出来事
食事そのものの問題食事に飽きた、いつもと違うものを拒む、食べ過ぎたフードや出し方を変えたか
病気熱、消化器の病気、おなかなどの痛み、口内炎ほかの症状や口を痛がる様子
年齢とともに起こりやすい変化嗅覚(においを感じる力)の低下、歯の不快感持病の有無。口の中は獣医師が診る

環境の変化があった猫でも、受診の目安に当たるときは動物病院に相談してください。食べない原因が環境の変化、食事、病気のどれかを、家で見た目だけで決めることはできません。

高齢の猫の変化は、病気や歯の問題のしるしのことがあります。年のせいで治療できないものと決めつけず、どんな変化でも獣医師に連絡してください。相談するときは、口の中の様子と持病の有無も確かめてもらいましょう。

口の痛みが気になるときは獣医師に相談する

口内炎で口が痛くて食べられないこともあります。口臭、よだれ、食べるときの痛み、歯ぐきの腫れなどは、口の問題を疑う手がかりになります。

  • 口が臭い
  • よだれが出る
  • 食べるときに痛がる
  • 歯ぐきが赤く腫れている
  • 口を前足で気にする
  • 硬いフードを食べたがらない

口臭、よだれ、食べるときの痛みは日本臨床獣医学フォーラムが口内炎を疑う症状として挙げています。

歯ぐきの腫れ、口を前足で気にする様子、硬いフードを食べたがらない様子は米国コーネル大学の猫の健康センターが歯の問題のサインとして挙げています。

猫は口の中の病気が比較的多い一方で、口を開けるのをいやがるため、症状がかなり進んでから受診することが多いとされています。歯の病気は、高齢の猫に多く見られます。

こうした様子に気づいたら、家で無理に口を開けさせず、動物病院で診てもらってください。口の中で何が起きているかは、全身麻酔をかけて歯を調べ、必要ならエックス線を撮らないと確かめられないとされています。

療法食を食べないときは変更前にかかりつけへ相談する

療法食を食べないときは、自己判断でほかのフードに替えず、かかりつけの獣医師に相談してください。

療法食は、特定の病気や健康状態にあるペットの栄養面を支える目的で、獣医師の指導のもとで食事管理に使うペットフードです。

栄養の特性は、総合栄養食(毎日の主な食事として与えることを目的としたフード)とは異なります。長い期間にわたって適切でない使い方をすると、健康を損なうおそれもあります。

療法食のパッケージにも、獣医師の指導のもとで与えるよう求める注意書きがあります。どの療法食にするかも、獣医師の指導のもとで決めるものです。

受診の目安を確認した後、何から見直すか

受診の目安に当たらない場合は、次の順に見直します。フードを替えるかどうかは、最後に考えます。

  • 療法食の指示や持病があれば、フードや与え方を変える前に獣医師に相談する
  • 療法食の指示や持病がなければ、食事の温度・皿・場所・回数を一つずつ見直す
  • フードを替えるときは、切り替え方を確かめてから少しずつ替える

見直しの途中で様子が変わったときや、判断に迷うときは、動物病院に相談してください。

フードを替える前に切り替え方を確認する

フードは急に替えず、1〜2週間かけて新しいフードの割合を徐々に増やします。食べ慣れていないフードに切り替えると、吐いたり下痢をしたりすることもあるためです。ある年齢になったからといって、急にその年齢用のフードに切り替えるのもあまり良くないとされています。

切り替えの間は、食欲や、吐く・下痢がないかを見ながら進めてください。

フードの形状と栄養表示を確かめる

ドライフードとウェットフードのどちらにするかは、口の様子と表示を確かめてから考えます。硬いフードを食べたがらないのは、歯の問題のサインの一つです。先に挙げた口のサインに当たるときは、形を変える前に獣医師に診てもらってください。

どちらか一つに決めず、混ぜて与える方法もあります。高齢の猫は腎臓の働きが落ちやすいため、どの形のフードでも、清潔な水にすぐ届くようにしておくことが大切です。

そのうえで缶詰とドライフードを混ぜると、缶詰に含まれる水分もとらせられます。

ウェットフードの食べ残しは、すぐに片づけてください。水分の多いウェットフードは、品質が落ちるのが早いためです。

どの形のフードでも、主食にするものはパッケージの目的の表示を確かめます。市販のペットフードには、公正競争規約(ペットフードの表示について業界団体が定めたルール)にもとづいて、次の四つの目的のいずれかが表示されます。

表示される目的どんなフードか
総合栄養食毎日の主な食事として与えることを目的としたフード
療法食獣医師の指導のもとで、病気や健康状態に合わせた食事管理に使うフード
間食おやつ。毎日の主な食事とは分けて扱う
その他の目的食総合栄養食ではない缶詰やレトルト、サプリメントなど。「一般食(おかずタイプ)」などと表示される

ウェットフードを主食にしたいときは、「総合栄養食」と表示されているかを確かめてください。「一般食(おかずタイプ)」などの、その他の目的食は総合栄養食ではありません。

シニア猫向けのフードの選び方と、療法食との違いは、シニア猫のフードの選び方|療法食との違いと表示の見方で解説しています。

冷たすぎず熱すぎない温度で出す

食欲のない猫には、冷たすぎず熱すぎない温度で与えます。少量のおいしそうなもの、よい匂いのものを与えるのも、食欲のない猫への与え方の工夫です。

高齢の猫は嗅覚の低下が食への関心に関わることもありますが、温度を変えれば食べるとは限りません。猫の様子を見ながら試してください。

静かな場所と清潔な皿を用意する

食事を出すときは、静かな環境で、清潔な皿で、できれば平たい皿で与えます。

食器の場所まで行きにくそうな様子があれば、置き場所を見直してみてください。高齢の猫は、関節炎などで食べ物や水、トイレのある場所に行きにくくなることがあります。

階段を使いたがらない猫には、食器を複数の場所に置く方法が勧められています。

少しずつ回数を分けて出す

ふだんは、1日分のフードを2〜3回に分けて与えるか、ドライフードを置いていつでも食べられるようにします。猫は、昼夜を問わず少量ずつ頻繁に食べる習性があるためです。置いておく場合は、いつも清潔にし、定期的に交換してください。

食欲がないときは、少量ずつ頻繁に与えます。食べない場合は、10分以内に片づけます。

よくある質問

食べないで寝てばかりいるときはどうしますか

元気がなく寝てばかりいて、食べ方も変わっているときは、遅れずにかかりつけの獣医師に相談してください。高齢の猫の睡眠や食事のパターンの変化は、急でも徐々でも、遅れずに獣医師に診せることが勧められています。

相談のときに伝えられるよう、食べた量、水を飲んでいるか、ほかに気になる様子がないかも確かめておいてください。少しでも異変を感じたら、早めに獣医師に診てもらってください。

高齢の猫がチュールしか食べないのはなぜですか

チュールを食べていても、それだけでフードを食べない原因や健康状態は判断できません。食欲がない理由には、それまでの食事に飽きる、いつもと違うものを拒むといった食事そのものの問題もあれば、熱や消化器の病気、痛みなどの病気もあります。

チュールしか食べないときは、いつもの食事とチュールをそれぞれどれだけ食べたか、いつから変わったか、ほかの症状があるかを動物病院に伝えて相談してください。おやつ(間食)は毎日の主な食事とは分けて扱われ、毎日の主な食事として与えるのは総合栄養食です。与えている製品が総合栄養食か間食かは、パッケージの目的の表示で確かめられます。

食べないだけで寿命が近いと分かりますか

食べない理由には病気以外のものもあり、寿命が近いと決めつけず、ほかの様子もあわせて獣医師に伝え、相談してください。

食べない状態はさまざまな病気の症状で、新しい食べ物を嫌う、同居する動物の変化で気持ちが乱れるといった心理的な原因もあります。食べない状態が続く猫では、獣医師が歯や歯ぐきを含めて診察し、必要な検査を判断します。

食べてくれるなら人の食べ物をあげてもよいですか

人の食べ物で主食を置き換えず、食べない状況を獣医師に相談してください。総合栄養食は、毎日の主な食事として与えることを目的とし、新鮮な水と一緒に与えることで健康を保てるよう、栄養のバランスが整えられています。

毒性のあるものを食べたかもしれないときは、直ちにかかりつけの獣医師に連絡してください。人の食べ物には、猫に有毒なものもあります。たとえば、ぶどう、玉ねぎ、レーズン、アボカド、キシリトールを含むもの、チョコレートです。

食べないときは、口に入れて食べさせたほうがよいですか

口に入れて食べさせるかどうかは家で決めず、獣医師に相談して指示に従ってください。

栄養の補給は、獣医師の助言のもとで行ってください。口を開けて小さな食べ物を入れる方法は、周りが汚れやすく、与える側の負担も大きいうえ、うまく食べさせられないことがあります。猫が食べ物をいっそういやがるようになることもあります。

まとめ:受診の目安と食事の見直しを確認する

最後に記事の内容をまとめます。

まとめ
  • 受診の目安の表に当たるかを確かめ、当たれば動物病院に連絡する
  • 年のせいと決めつけず、口の中の様子や持病を獣医師に確かめてもらう
  • 療法食を指示されていれば、替える前にかかりつけの獣医師に相談する
  • 食事の温度・皿・場所・回数を一つずつ見直し、フードを替える場合は切り替え方を確認する
  • 様子が変わったときや迷うときは、動物病院に相談する
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この記事を書いた人

保護して迎えた猫のこてつ1匹と暮らす飼い主です。実体験と公開資料を調べた内容を分けて書いています。獣医師ではなく、動物の医療・栄養に関する資格はありません。

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