猫の最期が近いかもしれないと感じると、何を準備すればよいか、最期の時間をどう過ごすかに迷います。
準備の出発点は、かかりつけの獣医師と治療や苦痛を和らげるケアの方針を話し合うことです。あわせて、急な変化が起きたときにどうするかを決めておきます。どこで看取るかを家族で話し合い、亡くなったあとの遺体の扱いと依頼先も前もって確かめておきます。
急な変化があるときの相談先と最期が近いときに見られる変化
猫の様子が急に変わったときは、遅れずに動物病院に相談してください。
夜間や休診日も含めて、急な変化のときにどこへ連絡すればよいかは、かかりつけの獣医師に前もって確認しておきましょう。連絡先や対応は、動物病院ごとに異なります。
最期が近づくと、食べる量や飲む量が減ることがあり、死に至る過程では正常な経過とされることがあります。ただ、減った理由が最期が近いためかどうかは、家での様子だけでは決められません。
食べる量や飲む量のほかにも、病気の経過とあわせて、かかりつけの獣医師に聞いておきたいことがあります。その猫の病気でどんな変化が現れるか、痛みについて気をつける点、動物病院に連絡する目安です。
話し合う内容は、病気の経過と、死が近づいたときや間近になったときに体や様子に現れるサインです。
米国の終末期ケアの指針では、苦痛を和らげながら自然な死を迎えることを選んだ猫について、最期の数時間は痛みに気づいて和らげることが最優先とされています。
家での様子を獣医師に伝えることが判断の材料になります。猫の生活の質について獣医師に相談するときは、食事・反応・鳴き方・居場所・トイレの様子を伝えます。
- 食べているか
- 飼い主や周囲に反応するか
- よく鳴くか(鳴くときに何をしているか)
- いつもの場所にいるか、移動したか
- トイレを使っているか、寝ている場所を汚していないか
看取りの前にかかりつけの獣医師と話し合うこと
かかりつけの獣医師とは、治療で期待できることと苦痛を和らげるケアの選択肢を中心に、次の点を話し合っておきます。
- 治療で期待できること(治癒、痛みの緩和、延命)と費用のおおよそ
- 苦痛を和らげるケア(緩和ケア)の選択肢
- 家でできるケアと、その方法を教えてもらえるか
- 病気の経過と、死が近づいたときの変化
- 急な変化が起きたときの対応
- 最期の迎え方(安楽死か、苦痛を和らげた自然な死か)
最期の迎え方の選択肢は、安楽死と、ホスピスのケアの支えを受けて痛みなどの苦痛を和らげながら迎える自然な死です。どちらを選ぶかは、かかりつけの獣医師と話し合ってください。
緩和ケアは症状と痛みの管理で、病気を治すことを目指す治療と並行して行えるとされています。
治療で治せない末期のがんのように病気を治すことが難しくなっても、痛みを和らげられる場合があります。
どの獣医療を選ぶかは、かかりつけの動物病院とよく相談して決めることが大切です。日本の動物病院での対応は、病院ごとに異なります。
どこで看取るかを決める
自宅と動物病院のどちらで最期を迎えたいかを、家族で話し合っておきます。かかりつけの動物病院には、受けられるサービスと急な変化が起きたときの連絡先を確認します。
- 短期入院・往診・訪問看護のサービスが受けられるか
- 家でのケアの方法を教えてもらえるか
- 急な変化が起きたときの連絡先と対応
米国動物病院協会などの終末期ケアの指針は、緩和・終末期ケアの計画に入れる点として、病院と家でのケアの分担を挙げています。
安楽死を病院と自宅のどちらで行うか、火葬・埋葬の手配を前もって決めておくことも、あわせて挙げられています。自宅での対応ができるかは、かかりつけの動物病院に確認してください。
最期の時間の過ごし方
最期の時間にそばにいるか、そっとしておくかは、猫の様子に合わせます。そばにいてほしがる猫もいれば、ひとりで静かにしていたい猫もいます。どちらか迷うときは、家での様子をかかりつけの獣医師に伝えて相談してください。
そのうえで、かかりつけの獣医師から受けた個別の指示に沿いながら、家で過ごしやすい環境を整えます。米国の終末期ケアの指針がケアの要素として挙げるもののうち、家で整えられるものには次のようなことがあります。
- 滑りにくい床の用意
- 猫が無理なくたどり着ける場所に、出入りしやすいトイレ
- 汚れや失禁のケア
- 清潔と毛づくろいのサポート
- 家族とのふれあい
- いつもどおりの日課の維持
休む場所は暖かくし、寝床はすきま風の当たる場所に置かないようにします。素早く動けない猫は、熱すぎるとやけどのおそれがあるため、暖かく、熱すぎない程度にとどめます。
寝床・トイレ・食事など、毎日の世話で見直す場所は、老猫の介護|家の中で先に変える場所と毎日の世話にまとめています。

亡くなったあとの安置と火葬を決める前に確認すること
遺体の扱いは、前もってかかりつけの獣医師と話し合っておきます。
米国動物病院協会などの終末期ケアの指針では、遺体を冷蔵・冷凍で保管するか、火葬・埋葬の選択肢は何かなどを、獣医師が飼い主と率直に話し合って説明するよう示されています。
遺体を誰に託すか、火葬や埋葬をどこへ依頼するかも、前もって考えておきましょう。
- 自宅で手配するか、動物病院に頼むかを考えておく
- 住んでいる自治体の扱いを確かめる
- 自治体に頼むときの包み方を確かめる
- 埋葬や供養を望む場合の依頼先を確かめる
遺体の扱いは自治体ごとに異なります。たとえば練馬区では、家庭で飼われていた動物の死体は、飼い主が専門の業者などに依頼するのが原則です。
どうしても依頼できない場合は、届け出により清掃事務所が有料で預かります。大阪市では、環境事業センターに申し込むと、有料で引き取りに来てもらえます。
ただし合同で処理されるため、骨灰の返却やお参りはできないとされています。京田辺市でも、市に遺体の処理を依頼すると合同で処理され、骨灰は返却されません。費用や方法は住んでいる自治体に確認してください。
自治体に引き取りを頼む場合は、包み方も確かめます。大阪市では、遺体を布で包んでビニール袋に入れ、首輪など燃えないものは入れないよう案内されています。
安楽死を選んだ場合の米国の動物病院の例では、処置の前に遺体をどうするか尋ねられることが多く、火葬後の灰を返してもらう選択もできると説明されています。日本の動物病院での対応は病院ごとに異なるため、かかりつけの獣医師に確かめてください。
火葬までの間に亡くなった猫をどう扱えばよいか、いつまでに火葬するかは、亡くなった直後にあわてないよう、前もってかかりつけの獣医師と依頼先に確かめておきます。
看取りがつらいと感じたときの相談先
看取りがつらいときの相談先は、時期によって変わります。
| 時期 | 相談先 |
|---|---|
| ひとりで食べたり排せつしたりするのが難しくなり、世話(介護)が必要になった時期 | かかりつけの動物病院、ペットシッターなど |
| 亡くなったあと、落ち込みが長く続くとき | 専門医、住んでいる自治体の相談窓口(福島県は「こころの健康相談窓口」を案内している) |
猫を失うことは人生を変える出来事になり得て、突然でも予期していても痛みは大きいものです。
深く悲しむのは自然な反応で、悲しみの期間に決まりはありません。
悲しみ・不安・疲れ・罪悪感・安堵などさまざまな感情が出るのは自然で、正しい悲しみ方はないとされています。
介護中は無理をしすぎず、限界を感じる前に相談してください。亡くなったあとも、悲しい気持ちを人に聞いてもらう、十分に休むなど、抱え込まないことが勧められています。
眠る・食べる・人と会うといった日常が損なわれ続けるときは、専門家の支援が役立つ可能性が高いとされています。
よくある質問
最期は、そっとしておいたほうがよいですか
一律には言えず、猫の様子に合わせて考えます。
高齢の猫には、気持ちの面での支えをより必要とする猫もいれば、ひとりで静かにしていたい猫もいます。いつもどおりの日課は猫を安心させるとされています。これは米国コーネル大学の、高齢猫一般についての説明です。
米国の終末期ケアの指針でも、家族とのふれあいがケアの要素の一つに挙がっています。接し方に迷うときは、家での様子をかかりつけの獣医師に伝えて相談してください。
自然に看取るとはどういうことですか
安楽死を選ばず、ホスピスのケアの支えを受けて痛みなどの苦痛を和らげながら、自然に最期を迎えることを指します。
米国動物病院協会などの終末期ケアの指針では、安楽死と、ホスピスに支えられた自然な死を、どちらも医学的・倫理的に許容される選択肢としています。どちらにするかは、飼い主とホスピスのケアに携わるチームが話し合って決めるとされています。自然な死を選ぶ場合、最期の数時間は痛みに気づいて和らげることが最優先とされます。日本の動物病院で受けられるケアは、かかりつけの獣医師に確かめてください。
同じく米国の指針では、苦痛を和らげた自然な死を選ぶ場合は、苦しさを抑えるための鎮静について話し合うとされています。鎮静で猫がどのような状態になるのか、具体的な手順や薬剤は、かかりつけの獣医師に確かめてください。
安楽死について、かかりつけの獣医師に相談してもよいですか
相談できます。
安楽死の選択肢は、最初の相談で話題にしてもよく、その後の相談で改めて話し合うこともできるとされています。
安楽死をいつ選ぶかに厳密な基準はなく、通常は飼い主と獣医師が一緒に決めるものです。家での様子を獣医師に伝えることも大切です。
獣医師が勧めた場合でも、安楽死の実施には飼い主の同意が必要とされています。子どもがいる家庭では、前もって家族で話しておくのがよいとする説明もあります。
ここまでは米国の指針や資料による説明で、日本の動物病院での対応は病院ごとに異なります。かかりつけの獣医師に直接相談してください。
最期が近いのか、年のせいなのか、家で見分けられますか
家での様子だけで見分けるのは難しいため、急な変化でもゆっくりした変化でも、年のせいと決めずに早めに獣医師に診てもらいます。
高齢の猫の行動や体の変化は、病気や歯の問題のサインのこともあるため、年のせいと決めつけないようにします。遅れずに獣医師に診てもらいたい変化には、次のような例があります。
- よく鳴く
- お気に入りの休み場所を避けて隠れる
- トイレを外す・使わない
- 呼んでも来ない
- 睡眠や食事のパターンが変わる
診察を受けると、獣医師は苦痛を伴う病気の見当をつけ、治療した場合としない場合の見通しを判断して、選択肢を説明できるとされています。
気になる変化があれば、まず動物病院に相談してください。診断を受けている猫は、病気の経過と死が近づいたときの変化を、かかりつけの獣医師と話し合っておきます。
最期の時にそばにいられなかったら
そばにいられなかったことを悔やむ気持ちは、猫を亡くしたあとに出ることがある感情の一つです。
猫を亡くしたあとは、悲しみ・後悔・怒り・不確かさ・空虚感などが伴うことがあります。悲しむための時間をとることが大切です。
罪悪感を含むさまざまな感情が出るのは自然なことです。
亡くなったあとの落ち込みが長く続くときは、専門医に相談してください。相談先は、住んでいる自治体に確かめてください。
まとめ:看取りに向けて家族と確認しておくこと
かかりつけの獣医師との相談から、亡くなったあとの依頼先まで、家族で決めておきます。
- かかりつけの獣医師と治療や苦痛を和らげるケアの方針を話し合う
- 急な変化が起きたときにどうするかを、獣医師と事前に決めておく
- どこで看取るかを家族で話し合い、かかりつけの動物病院で受けられることを確かめる
- 最期の時間の過ごし方について、獣医師から個別に指示を受けておく
- 亡くなったあとの遺体の扱いと依頼先を、前もって確かめておく
猫の状態や看取り方に迷うときはかかりつけの獣医師に、悲しみで日常生活がつらいときは専門家や住んでいる自治体の窓口に相談してください。
