猫の膀胱炎と血尿|急いで受診する目安と考えられる原因

明るい窓辺でこちらを見る灰白の猫。猫の血尿と膀胱炎、受診の目安と尿の変化の見方を紹介するアイキャッチ。

トイレの砂や尿が、いつもより赤く見える。猫の尿に血が混じっているように見えると、すぐ動物病院に行くか、膀胱炎なのか、ほかの病気なのかを考えることになります。

尿がほとんど出ない、何度もトイレで力むのに出ないといった様子があれば、尿道が詰まっている可能性があります。尿道は、膀胱から体の外へ尿を通す管です。尿道が詰まった状態は治療しないと命にかかわることがあるため、すぐ動物病院に連絡してください。

尿が出ていても、自己判断で受診の時期を決めないでください。血尿の原因は膀胱炎だけではなく、見た目では区別できないため、様子を動物病院に伝えて受診の時期を確かめてください。

本記事は医学的助言ではありません。獣医師団体や大学などの情報をもとに、獣医師ではない飼い主がまとめています。診断や治療の判断はかかりつけの獣医師に相談してください。

目次

血尿が見られたときの受診判断

尿が出ない場合はすぐ動物病院に連絡し、尿が出ている場合も受診の時期を動物病院に確かめます。

臨床獣医学の学術団体である日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)は、飼い主向け解説「尿の色が赤い」で、赤い尿がみられたときの様子を二つに分けています。区分は、すぐ病院へ行くものと、すみやかに病院へ行くものです。

尿が出ない・ほとんど出ないときはすぐ動物病院に連絡する

尿を出そうとして力んでも出せない、またはごく少ししか出ないときは、すぐ受診してください。尿道が詰まる「尿道閉塞」の可能性があり、緊急の状態とされています。

尿が出ているのか、力んでも出ていないのか見分けがつかないときも、すぐ動物病院に連絡してください。

尿道閉塞はほぼ雄猫に起こり、治療しないと命にかかわることがある救急として扱われます。詰まりは、動物病院で急いで取り除いてもらう必要があります。

尿道閉塞になる数日前から、尿の回数が増える、力む、血尿といった様子がみられることもあります。尿道が詰まったときのサインとして挙げられているのは、次の様子です。

  • 何も出ないまま、繰り返し排尿しようとする
  • 力んで鳴く、苦しがる
  • 落ち着きがない
  • 陰部をなめる
  • 食べない、元気がない
  • 吐く

JBVPの二つの区分に挙げられている様子は、次のとおりです。

JBVPの区分挙げられている様子
すぐ病院へ尿がほとんど出ない
ぐったりして激しく吐いている
元気と食欲もない
おなかが膨れている
ふらふらして、口の中が真っ白または黄色い
中毒の可能性がある
交通事故や落下などのけが
陰部からの激しい出血、ショック
すみやかに病院へ薄い赤色
最初は透明で、排尿の最後が赤い
砂のようなものが混じり、尿がやや赤い
何回も尿を少しずつする
赤いときと透明なときがある
赤くてやや濁っている
赤くて腐った臭いがする

「何回も尿を少しずつする」に当てはまる様子でも、力んで少ししか出ないときや、出ているか判断できないときは、尿道閉塞の可能性があります。その場合はすぐ動物病院に連絡してください。

それ以外の様子でも、いつ受診するかは、尿の出方を動物病院に伝えて確かめてください。猫で尿が急に出なくなる病気としては、雄猫の下部尿路疾患(膀胱や尿道の病気をまとめた呼び方)が多いとされています。

元気があっても血尿が見られたらいつ相談しますか

元気があっても、赤い尿を見たら、尿の量と色、ほかの症状を動物病院に伝えて受診の時期を確かめてください。元気があることだけでは、受診しなくてよいとは決められません。尿が赤い理由は、尿や血液を詳しく検査するまで簡単には決められないためです。

尿を出せていても、下部尿路疾患のほかのサインがある場合は、できるだけ早く動物病院に予約を入れて受診してください。

血尿が見えなくなっても受診は必要ですか

血尿が見えなくなっても、赤い尿を見たことを動物病院に伝え、受診の時期を確かめてください。

尿の赤さが見えなくなっても、出血が止まったとは決められません。目に見えないほど少しの出血は、尿に混じった血を調べる潜血検査で見つけられます。

血尿が見えなくなったことだけでは、原因が分かったことにもなりません。膀胱や尿道の症状がある猫では、検査をしてもほかの病気が見つからない膀胱の炎症と診断されることが多くあります。

これを特発性膀胱炎と呼びます。特発性膀胱炎は再発しやすく、症状が自然に治まってから再発することがあります。

特発性膀胱炎の症状は治療にかかわらず治まることが多い一方で、再発を防ぐために治療することが多いとされています。下部尿路の病気では、自然に良くなったり悪くなったりを繰り返すことがよくあります。

尿や猫砂の変化に気づいたときの確認事項

赤い尿がすべて血尿とは限りません。

尿が赤くなる原因は、血そのものが混じる血尿だけではありません。血液の赤い色素が尿に出る血色素尿や、筋肉の色素、食べ物の赤い色素による場合もあります。原因は大きく異なるため、検査するまでは理由を決められません。

血尿かどうかは、尿を顕微鏡で調べて赤血球を見つけることで判定します。

ふだんから、尿の出方や色を観察しておきましょう。尿が赤いことに気づくこと自体が難しい場合もありますが、家の中では白い紙砂を使っていれば赤い尿に気づきやすいとされています。

赤い尿の猫はほかの症状を伴うことが多いので、異常な様子があるときは尿にも注意してください。

全自動猫トイレでは排せつ物が自動で容器に集められるため、尿の色や量を目にする機会が減ります。購入前に確かめたいことは、全自動猫トイレのデメリット|買う前に確かめる条件と向かない家庭で解説しています。

血尿が目に見えず、検査でしか分からないこともあります。下部尿路の病気のサインとして、次の様子を確かめておいてください。

  • 尿や猫砂の色
  • 少しずつ何度も排尿していないか
  • トイレで力んでいないか、長く砂をかいていないか
  • 排尿のときに鳴かないか
  • トイレ以外の場所で排尿していないか
  • 陰部やおなかをよくなめていないか
  • 食欲や元気など、ほかの様子の変化

膀胱や尿道に問題のある猫はトイレで力むことが多く、便秘と間違われることがあります。シンクや浴槽など、冷たくてなめらかな場所で排尿したがることもあります。

水を飲む量や尿の量が増えたときは、糖尿病のこともあります。気づきやすい症状と受診の目安は、猫の糖尿病の症状|水をよく飲む・痩せるときの受診の目安で解説しています。

血尿に関わる下部尿路の病気と動物病院での調べ方

下部尿路疾患は特定の病名ではなく、尿の回数が増える、血尿が出る、排尿時に痛がるといった膀胱や尿道の問題のサインをまとめた呼び方です。血尿に関わる主な原因は、次のとおりです。

考えられる原因特徴
特発性膀胱炎ほかの病気が診断で確認できない場合の呼び方。頻繁に排尿しようとし、血尿がみられることが多い
尿路結石尿の中にできた石(結石)が膀胱の粘膜を傷つけて出血したり、尿道に詰まって尿が出にくくなったりする。結石の成分ではストルバイトとシュウ酸カルシウムが多く、X線や超音波で調べる
細菌感染猫では比較的まれで、高齢の猫や、腎臓病・糖尿病などほかの病気のある猫で診断されやすい。特発性膀胱炎に細菌感染はない
尿道栓子結石とは別に、たんぱく質や細胞、結晶などが固まってできた栓のような塊。尿道を塞ぎ、尿道閉塞の原因になる。尿道閉塞は、結石や尿道の腫れでも起こる
そのほかけが、老猫にまれな腫瘍、腎臓自体の病気、血が止まりにくくなる病気、生まれつきの体のつくりの異常

これらは症状が似ていて、見た目では区別できません。原因がさまざまで、診断は難しいとされています。

最初に行うのは、診察と尿検査です。原因が分からなければ、血液検査、X線、おなかの超音波検査、尿の培養を勧められることがあります。検査ごとの費用の目安は、検査と処置の費用の目安にまとめています。

特発性膀胱炎を確かめる検査はなく、ほかの原因を除いていくことで診断します。一度の検査で原因がはっきりしないこともあるため、検査の進め方は動物病院で相談してください。

検査と処置の費用の目安

動物病院の料金は病院ごとに決められていて、実際に払う金額は、受けた診察・検査・処置の料金の合計になります。下の表は、日本獣医師会の「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査」(2021年)で、全国の動物病院から集めた料金の中央値です。どの検査を受けるかは猫の様子で変わるため、受診前におおよその費用を動物病院に聞いておくと安心です。

診察・検査全国の中央値
初診料1,500円前後
再診料750円前後
尿検査(尿比重・試験紙・沈渣)1,500円前後
採尿(カテーテル・膀胱穿刺)各1,500円前後
X線検査(単純撮影)4,000円前後
X線検査(尿路造影)8,750円前後
おなかの超音波検査4,000円前後
採血750円前後
血球計算(CBC)1,500円前後
血液生化学検査6,250円前後
細菌の薬剤感受性試験6,250円前後
時間外の診療(平日・休診日)各2,500円前後
時間外の診療(深夜)6,250円前後
処置・入院全国の中央値
鎮静4,000円前後
尿道閉塞の解除4,000円前後
尿道カテーテルの留置4,000円前後
静脈内輸液4,000円前後
膀胱洗浄2,500円前後
皮下輸液2,500円前後
入院(猫)2,500円前後
全身麻酔11,250円前後
膀胱切開35,000円前後

初めて受診して、診察(初診料)・尿検査・おなかの超音波検査を受けた場合は、合わせて7,000円前後です。中央値の1,500円・1,500円・4,000円を足した試算で、実際の会計額を集めた統計ではありません。

入院(猫)のほかは、犬と猫を分けずに集めた料金です。2021年の調査のため、今の料金とは違うことがあります。

1年間にかかった診療費の例として、アニコム損保の「家庭どうぶつ白書2025」では、保険金の請求があった猫の膀胱炎の年間診療費(通院・入院・手術を含む)の中央値が、0〜4歳で12,645円、5〜9歳で14,413円、10歳以上で17,380円です。

動物病院に伝える情報と採尿の相談

尿がほとんど出ないときは、尿を採ろうとせず、すぐ動物病院に連絡してください。

連絡するときは、尿の色や出方など、気づいた様子を伝えます。特発性膀胱炎の診断では、尿検査や画像の検査に加えて、猫の行動の履歴と、トイレなどの置き場所や管理のしかたも確かめます。動物病院には、次のことを伝えてください。

  • 尿の色と出方
  • 排尿の回数と、力む・鳴く様子
  • トイレ以外での排尿
  • 食欲や元気など、ほかの様子
  • トイレの数と置き場所、猫砂の種類

家で尿を採って持っていくかどうかは、先に動物病院に確かめてください。家で採る場合は、尿を吸わない猫砂とスポイトを使う方法があります。ふだんの猫砂では尿が採れないため、採尿用の猫砂をどこで手に入れるかは受診先に聞いてください。

  • 尿を吸わない採尿用の猫砂をトレイに入れる
  • 猫が使ったあと、トレイを傾けて尿を隅に集める
  • スポイトで尿を吸い取り、採尿容器に入れて蓋を閉める
  • 容器のラベルに、猫の名前と採った日時を書く

家で採った尿は、細菌の感染を調べる検査には向かないことがあります。自然に出た尿には尿道の出口近くにいる菌が混じるため、細菌が見つかっても感染の証拠にならないことが多いとされています。細菌を調べるときは、動物病院で膀胱から直接尿を採る方法が優先されます。

採り方と保存のしかたは、受診先の指示に従ってください。米国コーネル大学 猫の健康センターの情報では、尿の細菌培養で、温かい検体中の細菌数が20〜40分で倍になりうるとされています。

尿道閉塞のあとは、再診のときに尿の提出を求められることがあります。

再発リスクについて動物病院に相談したい生活環境の工夫

どの工夫を取り入れるかは、診断に応じて獣医師に相談してください。炎症や結石、尿道の閉塞を繰り返す猫もいる一方で、多くの猫は再発しないか、たまにしか再発しないとされています。

家でできる工夫として、次のものが挙げられています。

  • 新鮮な水をいつも用意する
  • 水飲み場を何か所かに置く
  • トイレは猫の数より1個多く用意する
  • トイレを静かな場所に置き、清潔に保つ
  • 猫が好む種類の砂を探す
  • 食事を少量ずつ何回かに分けて与える
  • 体重を管理する
  • 大きな生活の変化を減らし、遊ぶ時間をつくる

治療の内容は原因によって変わりますが、水を飲む量と排尿の回数を増やすことは、どの原因でも必要とされています。ウェットフードへの切り替えも選択肢に含まれますが、食事を変える場合は獣医師と相談してください。

特発性膀胱炎の発症には、ストレスが大きく関わるとみられています。環境を整えてストレスを減らすことや、食事の内容と与える時間を一定に保つことも、工夫として挙げられています。

水飲み場は猫のお気に入りの場所に置き、水はこまめに新鮮なものに替えます。トイレの隣は避けてください。トイレが汚れていると、猫は排尿を我慢することがあります。

埼玉県獣医師会は、秋から冬に寒くなると猫の運動量と水を飲む量が減ると説明しています。この時期は下部尿路の病気を起こしやすい季節とされています。寒い時期は特に、水飲み場と遊ぶ時間の工夫を続けてください。

よくある質問

薬を使っても血尿が続くときはどうしますか

薬をやめる、変えるといった判断は家でせず、薬を出した動物病院に、症状の経過と排尿の様子を伝えて相談してください。

特発性膀胱炎に特化した薬はなく、薬は食事と環境を変えても良くならない場合に使うのが一般的とされています。ただし、症状が急に強く出ている時期(急性期)の痛みには、獣医師が処方する鎮痛薬が助けになることがあります。

抗生物質を使っている場合は、一時的に良くなっても、細菌の感染があった証拠にはなりません。細菌の感染がある場合は、検査の結果にもとづく薬を適切な期間使うことが大切です。

血尿が続く・再び出たときはどうしますか

どのくらい続けば受診、という一律の期間は決められません。続いている様子や、再び出たときの様子を、診てもらった動物病院に伝えて相談してください。

力んでも尿が出ない、または数滴しか出ないときは、すぐ獣医師に診てもらう必要があります。特発性膀胱炎は再発しやすいとされています。一方、下部尿路の病気の猫全体では、再発しないか、たまにしか再発しない猫が多く、繰り返す猫もいます。

ストレスだけで血尿の原因を判断できますか

ストレスだけで原因を決めることはできません。特発性膀胱炎の原因は分かっていないものの、ストレスが大きな役割を果たすと考えられています。一方で、特発性膀胱炎を確かめる検査はなく、ほかの原因を除いて診断します。

生活の変化に心当たりがあっても、動物病院に相談してください。尿が赤い理由は、検査するまで決められません。

雄猫と雌猫で、気をつけることは違いますか

雄猫でも雌猫でも、尿がほとんど出ないときはすぐ動物病院に連絡してください。日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)は、雄と雌の区別なく「尿がほとんど出ない」を「すぐ病院へ」に挙げています。

一方で、尿道が詰まる尿道閉塞は、ほぼ雄猫に起こるとされています。雄猫は尿道が長く細いため、尿道閉塞のリスクが高くなります。

膀胱炎が心配なとき、飼い主の判断でフードを変えてもよいですか

飼い主の判断で変えず、獣医師に相談してください。膀胱炎の症状が出ている最中や体調が悪いときは、食事を変えないでください。

食事療法は病状によって選び、獣医師の処方で行うものです。自己判断の食事療法は危険で、逆効果になることもあります。米国コーネル大学 猫の健康センターの情報では、「尿路の健康」をうたうフードについて、下部尿路の症状そのものが起きるのを減らしたという証拠はないとされています。食事を変えるかどうかは、獣医師に相談してください。

まとめ:血尿に気づいたときに確認し、動物病院へ伝えること

膀胱炎かどうかは、見た目では分かりません。血尿の原因には膀胱炎のほかに結石や細菌感染などもあり、症状が似ているため、動物病院で尿検査などを受けて調べます。

猫の尿に血が混じっているように見えたら、まず尿が出ているかを確かめ、受診の時期と動物病院に伝える内容を整えてください。

まとめ
  • 尿が出ているかを確かめる
  • 尿がほとんど出ない、力んでも出ないときは、すぐ動物病院に連絡する
  • 尿が出ていても、受診の時期を動物病院に確かめる
  • 尿の色と出方、回数、ほかの様子、トイレの環境をメモして伝える
  • 動物病院から指示があれば、その方法で尿を採って持っていく
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

保護して迎えた猫のこてつ1匹と暮らす飼い主です。実体験と公開資料を調べた内容を分けて書いています。獣医師ではなく、動物の医療・栄養に関する資格はありません。

目次